項羽と劉邦なら項羽派。だがしかしbut けどけれどyet
私はもともと中国の古典が好きでして。
それと関連して読み始め、どハマりしたのが「項羽と劉邦」です。
勇猛果敢で、馬に乗って真っ先に軍の先頭を駆け抜ける姿は勇者そのもの。
自分に従わない者には冷徹ですが、生き方に筋を見つければ許すこともあります。
義に厚く、一本筋が通っている男です。
平気で自分を慕っている部下を見捨てたり、
逃げる車を軽くするために実の子をそこから落としたりします。
でもなぜか、慕ってくる者があるのが、劉邦の不思議です。
項羽と劉邦には、その他にも魅力的な人物がたくさん登場します。
・最初に劉邦の可能性を見出した、蕭何(しょうか)
・軍師、張良(ちょうりょう)
・最強の武将、韓信(かんしん)
ちなみに「背水の陣」は、韓信の作戦から生まれました。
・項羽の参謀、范増(はんぞう)
項羽は男気を持っておりリーダーシップがある。
劉邦は天性の人たらしとしてわけのわからない魅力がある。
蕭何は見る目があって着実に上り詰めるし、韓信はとにかく強い!
だがしかしbut けどけれどyet、
私が最も心を打たれたのは、章邯(しょうかん)の生き様です。
弱体を極め、滅びゆく運命の秦の中で、武官ですらなかった彼は突然兵を率いて戦うことになります。
ロクな武将が残っていない秦の中で、唯一と言ってもいいくらい見事な勝ちっぷりで各地を鎮圧していくのです。
しかし、味方であるはずの宮廷から支援を受けらないばかりか、謀反の疑いをかけられ、失意のうちに項羽に降伏します。
項羽は親のように慕った叔父を死に追いやった憎き章邯を殺しません。
その武人としての生き方に感銘を受けたからです。
しかしその項羽は突然、章邯との約束を破って秦兵20万人を殺してしまうんですね。
20万の命にはそれぞれに家族もいれば仲間もいる。
章邯は秦人に深く恨まれました。
20万の秦兵の命は救いたいと思い降伏したのに、自分(他2名)だけ生き残ってしまった。
そりゃ、自暴自棄にもなりますよ。
彼はすっかり気力を失ってしまい、劉邦との戦いの中で自害します。
…なんなんですか、人生って!
要するにですね、、、
1 全然、自分畑違いっすよ!この国もう潰れそうじゃないっすか!
しかも、囚人率いて戦うとか、無理ゲー
2 やべっ!意外とおれ強えーーー!負ける気せんわ。
3 はっ?なんで宮廷のやつら助けてくれないの?負けそうなんだが。
勝手におれのこと持ち上げといて助けてくれないだけじゃなく、
言いがかりつけてハメようとしてるよね?
ふざけんなや。
4 秦兵20万人助けてくれるなら降伏するわ
5 はっ?項羽のやつなに兵士皆殺しにしてんの。
ふざけんなや。
でも、もうおれに従ってくれる秦兵居ないんだが…
6 あーもう色々やだやだやだやだやだやだ。
劉邦攻めてきたし、何もかもどうでもいい。死ぬわ。
これ、人生投げ出したくなります。
時代に巻き込まれ、浮かれ、落とされ、深く恨まれ、みじめに死にゆく。
項羽が秦兵を穴埋めにしたことを知ったときの章邯の心情を察するだけで、
ほんと涙がとまらないです。
章邯の人生があまりに報われなくて、何とも言えない切なさが残ります。
■■あとがき■■
頑張ったからといってすべて報われるとは限らないけれど、
あまりに報われないと人生は頑張れないのです。
章邯の代償は、行いに対してあまりに大きかった。
行為と結果は等しくなるとは限りません。
まじ怖いっす。うん。